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丘の上のこうちゃん

松山 さくら

全5話[10,242文字] 純文学〔文芸〕
 主人公の亮太は、四月から始まる下宿生活を前に、地元での最後の春休みを過ごしていた。厳しい両親の元を離れたかった亮太は、自ら地方の国立大学を受験することを決意したのだが、いざ合格を果たしてみると、慣れ親しんだ町を離れることへの不安に襲われる。
 ある日、亮太は、自転車に乗って町を見わたせる丘の上に向かった。去年亡くなった祖母から、行ってはいけないと言われていた場所。亮太の目の前に現れたのは、真新しい住宅街。その一角の公園で休んでいると、小学一年生くらいの男の子が現れる。彼の名前は、こうちゃん。一緒にかくれんぼをして遊ぶことになったのだが、遊んでいる途中で、男の子は突如姿を消した。
 物怖じして内に籠るタイプだった亮太。親元を離れたいと願ったのは、そんな自分を変えたいと思ったからかも知れない。間もなく旅立ちを控える亮太に、友人の隼人は、中学校のときの体育祭の思い出を語る。それは亮太が、自分の力で初めて大きなことを成し遂げた瞬間でもあった。記憶の中に埋もれていた思い出に、亮太は徐々に心を奮い立たせていった。
 ある日、祖母の部屋の中で一冊のアルバムを見つけた。保育園の卒園アルバム。実は、亮太には、小学校一年生以前の記憶がまったくなかった。アルバムを開いた亮太は、そのアルバムに一枚の写真が挟まれていたことに気づく。両親と旅行に出かけたときに撮った家族写真。不思議だったのは、まだ幼い自分の隣に、見知らぬ男の子が写っていたこと。一人っ子として育った亮太は、とっさに首を傾げたが、その男の子が着ている服を見て、亮太は唖然とした。丘の上で二度ほど一緒に遊んだことのあった、こうちゃんだったから。
 祖母の部屋にあったその写真、祖母から丘の上に行ってはいけないと言われていたこと、それに幼い頃の記憶が残っていないことなどを思案していた亮太は、ある考えに行き着く。それは、こうちゃんが自分の弟ではないかということ。その彼は、自分を助けるために、自ら車に飛び込んだのではないかということ。
 いたかも知れない弟のために、自分にできることを考え巡らせていた亮太は、再び丘の上に向かう。兄として弟を弔う気持ちと、丘の上から兄を見守り続けてくれていた弟の思いに報いるために……。そして迎えた兄弟の思いが一つに重なる瞬間。亮太は、かつていた弟の思いを胸に、未来に向かって旅立つことを決意するのであった。

現代 冒険 タイムトラベル ミステリー 怪談 子供 家族
全5話[10,242文字]
各話平均2,048文字
[推定読了0時間21分]
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最新作投稿:2026年09月15日(18:30:00)
 投稿開始:2026年09月11日(18:00:00)

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