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独りきりの演奏会

松山 さくら

全16話[29,326文字] 純文学〔文芸〕
 大学の勉強に力が入らない颯太は、将来に漠然とした不安を抱いていた。そんなときに数年ぶりに出会ったのが、中学生の頃の友人の航大だった。容姿端麗、サッカー部員として活躍し、成績も優秀だった航大は、颯太にとって憧れの的だった。
 ある日、気分を変えようと部屋の整理をしていたときに見つけたのが、高校時代の部活動で使っていたフルート。子供の頃に通っていた家の近くの池のほとりに行って、練習してみることにしたのだが……。
 そこで颯太は、不思議な少年と出会う。少年の名前は春斗、訊けば小学二年生だと言う。そんな春斗と、颯太はある約束を交わす。それは、次に会ったときに、フルートを演奏するということ。実は、颯太はフルートを吹くことができなかった。それで、高校時代に歯がゆい思いをしていたのだった。
 フルートの練習を始めた颯太だったが、すっと肩の力を抜くことで、意外にも簡単に音が出せることに気づく。夢中で練習したおかげで、童謡などを奏でることができるようになった。
 颯太は再び、池のほとりに立っていた。誰にも遠慮することなく、フルートを奏でるため。そこでまた、颯太は春斗と出会う。春斗と約束を交わしていたことを思い出した颯太は、たった一人の観客を前に演奏会を開くことになった。
 どこからともなく現れてはどこかに帰って行く春斗のことが次第に気になり始めた颯太は、春斗のことを航大に相談した。学校に問い合わせた方がよいとアドバイスされた颯太は、学校に電話をかけてみたのだが、春斗という生徒が在籍していないことがわかった。
 さらに航大から、衝撃的なことを聞かされる。それは、小学二年生のときのクラスに、春斗というよく似た少年がいたということ。当時、クラスでいじめられていた颯太にとって、交通事故で亡くなった春斗は、自分の味方でもあり、背中をそっと押してくれる存在でもあった。
 やがて颯太は、今になって春斗が目の前に現れるようになった意味を考えることになる。それは、颯太が自分自身と向き合い、新しい世界に一歩踏み出すのを、そっと見守ってくれているということ。大学生になった今、春斗と一緒に池のほとりで過ごす日々は、颯太が自分の夢を見つめることにつながっていた。
 やがて、颯太は決意する。夢に向かって踏み出すことを。かつて自分にかけてくれた春斗の優しい言葉を胸に、颯太は前を向いて歩いて行くことになった。

夏のホラー2026 学校 ミステリー 大学生 吹奏楽 子供
全16話[29,326文字]
各話平均1,833文字
[推定読了0時間59分]
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最新作投稿:2026年08月28日(18:00:00)
 投稿開始:2026年08月16日(13:00:00)

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