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短編.

氷が歌う夜、渡し守は近道を売らない〜きみの手だけは、間に合わせる〜

宇野 心一

全1話[9,345文字] ハイファンタジー〔ファンタジー〕
冬だけ全面が凍る、ブレノヴァの鏡の湖。渡し守ヨナスは、まっすぐの近道を決して売らない。十二の冬、渡しを急いだ父を氷に呑まれたからだ。ある紅の夜、薬を積んだ商隊が湖岸へ駆け込む。対岸の村は流行り病。橇から降りたのは、薬師の孫娘ニナ——倒れたのは、彼女をひとりで育てた祖母だった。「今すぐ、渡らせてください」。だが今夜は、氷が歌う夜。祖父の教えでは、絶対に渡ってはならない夜だった。

夜明け、ヨナスは誰も知らない遠回りの「父の線」で氷へ踏み出す。待ちきれず直線へ逸れた者の足もとで、氷が割れる——父が消えたのと、ほとんど同じ場所で。臆病と嘲笑った声が静かな畏敬に変わるとき、少女はひとつの約束を残していく。近道は、生きて渡ってはじめて近道になる。氷の悲鳴を知る耳にだけ、春の歌はいちばん先に聞こえる。読み切りです。

渡し守 人情 家族 女主人公 泣ける 心温まる ハッピーエンド 短編
全1話[9,345文字]
各話平均9,345文字
[推定読了0時間19分]
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最新作投稿:2026年07月31日(18:11:41)
 投稿開始:2026年07月31日(18:11:41)

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