データ取得:2026-07-28未明
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戻すおつもりで手放したのですか?品物ではないのですけれど
九葉(くずは)
全10話[29,679文字] 異世界〔恋愛〕義母が書面を読み上げるあいだ、隣の部屋で椅子の鳴る音がしました。
扉の下に、影がありました。
それきり、その人は入ってきませんでした。
理由は、誰からも説明されませんでした。
いまわたくしは、北の港町で乾物と香辛料の目利きをしております。
袋の匂いと重さで、湿った荷を選り分ける仕事です。
港の人は、わたくしをブラントの奥様と呼びます。
違います、と言いそびれたまま、二年が過ぎました。
ひとつだけ、屋敷とつながったままのものがあります。
義母の膝の薬に使う草を、いまも春と秋に乾かしております。
頼まれてはおりません。
給金から代金を引いてもらって、船に乗せております。
そこへ、王都の紋章をつけた馬車が迎えに来ました。
夫は言います。
親族を黙らせるまでの二年だった。
待たせてすまなかった、と。
けれど、待っていろとは、一度も言われておりません。
この港には、二十歳年上の商人がおります。
わたくしの手を止めさせず、何も尋ねない人です。
決めるのはあなたです、としか言いません。
今年の薬草は、もう乾き上がりました。
札を書けば、あとは船に乗せるだけです。
その札に何と書くのか、わたくしはまだ決めておりません。
(各話平均2,968文字)
[推定読了0時間60分]
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最新作投稿:2026年07月27日(12:03:33)投稿開始:2026年07月27日(12:01:35)
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