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短編

婚約七年目、猫用GPSで彼の“本当の家族”を見つけました

熾星

全1話[18,446文字] ヒューマンドラマ〔文芸〕
婚約七周年の記念日。
 私は猫用GPSで、自分に「婚約破棄」という贈り物をした。
 それは先週、猫を探すために買ったGPSだった。
 うちの猫の「もち」が、数日前の深夜にいなくなった。
 私は半泣きになりながら、東京中を探し回った。
 結局、もち本人はベランダの隙間からひょっこり戻ってきたのだけれど、本来なら首輪につけるはずだったGPSタグは、私が何気なく佐伯悠真の車に置きっぱなしにしていた。
 そして記念日の夜。
 悠真は、会社のプロジェクトでトラブルが起きたから、一緒に食事はできないと言った。
 私は一人でレストランに座っていた。
 目の前には、すっかり冷めたステーキ。
 そして、一度も口をつけられていないワイングラス。
 そのとき、スマホに通知が出た。
「猫用GPSが移動中です」
 私は一瞬、固まった。
 もちなら、うちのソファで丸くなって眠っている。
 つまり。
 動いているのは、佐伯悠真の車にある、あのGPSタグだった。
 私は最新の録音データを開いた。
 最初に聞こえたのは、エンジンが止まる音。
 次に、幼い男の子の弾んだ声が響いた。
「パパ!」
 続いて、女の声がした。
「今日はずいぶん早いのね。白石澪との記念日があるって言ってなかった?」
 悠真が笑った。
 私が七年間付き合ってきた中で、何度も聞いたことのないような、柔らかく、気の抜けた、甘やかすような笑い方だった。
「断ったよ。記念日なんかより、沙耶と湊のほうが大事に決まってるだろ」
 猫用GPSは、迷子になった猫を見つけてはくれなかった。
 けれど、婚約者が隠していた、もう一つの家を見つけてくれた。

BWK大賞1 集英社小説大賞7 シリアス 女主人公 和風 現代 職業もの 群像劇 日常 婚約破棄 ざまぁ 復讐 不倫 裏切り 女性向け
全1話[18,446文字]
各話平均18,446文字
[推定読了0時間37分]
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最新作投稿:2026年06月12日(16:51:14)
 投稿開始:2026年06月12日(16:51:14)


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