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短編

わたくしが毒殺して差し上げますわ! 

紫電のチュウニー

全1話[8,667文字] その他〔その他〕
 今日も一人、調理の練習に勤しむことしか出来ない。
 これというのも全部、あの時の事故が原因。
 わたくしを傷物にしてくれた、伯爵。
 ……絶対に許せませんわ。

 ここはシュトローエン男爵邸。
 彼女の名はレミス・アルアン・シュトローエンという男爵の娘。
 きりっとした目つきに少しカウルを巻いた髪を丁寧に束ね、線は細く上品さを持つ。
 何処からどうみても美しい彼女だが、頭には常に帽子を被っていた。

 ――彼女は貴族パーティーの最中、運悪くフロイデル伯爵が落としてしまったグラスで
頭をぶつけ、赤色のワインで全身を染め上げ大惨事を引き起こす要因となる。
 命にこそ別状は無かったものの、頭を縫う重大な事故となり、フロイデル伯爵は責任を
持って第二婦人として迎え入れる準備があるという。
 彼女の親であるシュトローエン男爵も、まさに天から降りて来た幸運としてこれを喜ん
でいた。
 
 ……当然、彼女にとってそんなことは無い。
 女性にとって最も大切な美を汚されたのだ。
 伯爵婦人となることは確かに名誉あることだろう。
 しかし、我が身を傷つけただけでなく、あまつさえ第一婦人ではない第二婦人として迎
え入れるなど、許せるものでは無い。
 それに彼女自身、婚姻にあまり興味を示していなかった。
 なぜなら彼女は、死ぬほど料理を作ることが好きだったからである。

 そして彼女は決意する。
 自らの料理でこの恨み、晴らしてくれようと。
 当然何の算段もなく料理を提供すれば気付かれてしまう。
 もし最終的に捕えられることになっても、甘んじてそれを受ける覚悟自体はある。 
 だが、直ぐに気付かれぬように最善の手は打っておこう。

 まず、自分の家に存在しないはずの者を一名、料理人として雇い入れた。
 これにはとても苦労した。
 自分と同じ背丈の女性で容姿もさほど悪くない町娘を探した。
 名前も住処も異なる登録をした。実際にこの娘がここへ来ることはない。
 そして、この娘は特別に腕がいいので、集中出来る専用の料理場を設けるとして、新たな専用
調理場を造らせた。

 ここでは自身も料理場に立つことがあると説明し、無事完成させた専用の料理場である。
 この場所に立ち入れるのはつまり、彼女だけとなったのだ。
 料理場に、彼女の高笑いが鳴り響く。
「オーッホッホッホッホ! お命頂戴するわ!」

身分差 日常 ホームドラマ 女主人公 勘違い 伯爵 男爵 お嬢様 傷物 恨み ちょいギャグ
全1話[8,667文字]
各話平均8,667文字
[推定読了0時間18分]
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最新作投稿:2024年02月05日(12:57:30)
 投稿開始:2024年02月05日(12:48:04)


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