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データ取得:2026-06-01未明

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連載中.

半径3メートルの観察者 上巻 観察を、始める

どん

全14話[55,155文字] その他〔その他〕
「うちは優しい人ばっかりだから」

 配属初日に何度も聞かされたその一言に、桐谷蒼太は、わずかな引っ掛かりを覚えた。

 桐谷蒼太、二十二歳。四方を山に囲まれた人口三十万の盆地・港川市。創業五十五年、社員百一名の中小IT企業、株式会社ヨキエルに、新卒で入社する。配属はチームA。同期は六人、先輩は三人、マネージャーが一人。最終面接で耳にした「三年で土台を作る、それがヨキエルに来る人たちの責任です」という一言が、まだ頭の隅で鳴っている。

 入社初日の朝、蒼太はノートに一行だけ書いた。

——明日から、観察を始める。

 ある先輩は、コードレビューにすぐ「LGTM!」とだけ返してくる。別の先輩は、丁寧に二十二件のコメントを返してくる。どちらも、たぶん、優しさ。ただ、同じ優しさのはずなのに、何かが違う。

 蒼太はノートに観察を書き留めていく。先輩の言葉、マネージャーの機嫌の波、同期六人の語尾の差、月例の社内勉強会で遠野CTOが書いた一語、夏祭りの浴衣、冬の雪、年の暮れの一人の夜。書き続けるうちに、二種類の優しさの輪郭が、少しずつ像を結び始める。

 季節は春から夏、秋を経て、雪の港川市へ。

 ノートを最初から読み返した一年目の年の瀬、蒼太はまだ言葉にならない何かに気付く。

 桜並木通りに、また春が近づいている。

——観察するだけの一年は、今日で終わる。

群像と内省の両輪で描く、新卒エンジニアの一年目。

男主人公 現代 職業もの 群像劇 日常 ITエンジニア 新卒 エンジニア 成長
全14話[55,155文字]
各話平均3,940文字
[推定読了1時間51分]
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最新作投稿:2026年06月01日(09:00:00)
 投稿開始:2026年05月21日(09:20:27)

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