データ取得:2025/04/19未明
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異世界で女にされた俺、百合の姫君に囲まれてスール契約を迫られてる件について──依代はまだ名を持たない
うみの
全65話[99,874文字] 異世界〔恋愛〕 R15 GL有りもう誰も演習には使わない台座。
花のない台座。
名前が書かれることもない記録用紙の置き場所。
でもその石の表面に、
透は手のひらをそっと重ねた。
誰の手の形かはわからない。
でも、ここには確かに“たくさんの指先”が触れていた。
「……選ばなかったのに、
わたしの中には、こんなにたくさん残ってる」
声は出ていたのに、誰にも届かない。
それでも、透の内側には、確かな応答があった。
*
帰り道、環が待っていた。
いつものように、笑っていたけれど、
その笑顔の奥に“終わりを知っている人の顔”があった。
「透くん、名前ってさ、呼ばれないままのほうが残ることってあるよね」
透はうなずいた。
「わたしね、最後まで祈らなかったの。
祈ったら、制度に刻まれちゃうから」
「でも、触れた。話した。……愛したって、言っていいと思ってる」
環の言葉は冗談のようだった。
でも、透の喉の奥に、その音だけが刺さった。
「だからさ、透くん。わたしのこと、
忘れたくなったら、また触れて。名前じゃなくて」
そう言って、環は指先を伸ばした。
髪を払うようにして、透の耳のうしろをそっと撫でた。
その場所に、制度は何も記録していなかった。
でも透の身体は、それを覚えていた。
誰にも書かれなかった祈りが、
今日もひとつ、透の中に静かに刻まれていった。
(各話平均1,537文字)
[推定読了3時間20分]
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評価人数:1人(平均5pt)
最新作投稿:2025年04月13日(17:11:11)投稿開始:2025年04月12日(09:19:50)
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