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短編

トマトかパプリカ

海森 樹

全1話[2,865文字] 純文学〔文芸〕
「ちょっと待っとけ」

 そう言った老人は竿を置いて地面に手をつくと、下を向いて嘔吐した。老人の胃の内容物が吐き散らされる音がする。一度は目を逸らしたものの、好奇心に負けて思わず目をやってしまった。真っ黒な液体と入念に咀嚼されたであろう黄色いペースト状の何か、そしてクリーム色の幼虫が吐瀉物の中で蠢いていた。あたりにはコーヒーと胃液を混ぜ合わせたようなすえた臭いが立ち込める。真っ黒の液体はどうやら老人が飲んだコーヒーのようだった。

 僕は気分が悪くなり、鼻を摘んだ。老人はそんな僕の様子を気にすることなく、自分の吐瀉物の中からクリーム色の幼虫を拾い上げた。

「こいつを餌にすると、ここらの魚はよくかかるんだ」

 老人はそう言って笑った。残り少ない黄ばんだ歯は唾液の糸を引いていた。そして、手入れがほとんどされていない顎ヒゲにはトマトかパプリカのような赤いカスがこびりついていた。

R15
全1話[2,865文字]
各話平均2,865文字
[推定読了0時間6分]
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最新作投稿:2021年03月20日(13:39:10)
 投稿開始:2021年03月20日(13:39:10)

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